LLMの未来

公開: 2026-09-20
LLMClaudeCodexAIエージェント開発環境

これからLLMがどうなるかを4つ予想した。そのうえで一次報道を当たった。

結果は、当たったもの・判断を保留したもの・予想と逆だったものに分かれた。 予想のまま書くと事実のような顔をして出ていくので、一つずつ突き合わせる。

予想実際リリースペースが落ちる減速は表向きにすぎない大規模DCが要らなくなる軍事向けが中心になる表明は出た。行動は伴っていない判断を保留。動機の根拠が無い逆。縮小ではなく分散逆。会社によって分岐した
4つのうち2つは、予想と逆向きだった。

予想1 リリースペースは落ちる

半分当たった。落とすという表明は出たが、行動が伴っていない。

2026年9月12日、Anthropicのダリオ・アモデイが3,800語のエッセイで、 モデルの能力向上のペースを意図的に緩めるべきだと主張した。 OpenAIのサム・アルトマンが同意を表明し、イーロン・マスクも賛同した。

市場はこれを本気で受け取った。9月14日から15日にかけてAI関連株が下落し、 逆にサイバーセキュリティ株が上がっている。

ところがその数日後、AnthropicがIPOを前に新モデルの投入を検討しているという報道が出た。 OpenAIが法人向けで勢いを増しているためとされる。

減速を主張した当人が、数日後には競合に合わせて出そうとしている。 速度を落とすか、競合に追いつくか。この二択を公開の場で選ばされているのが現在地だった。

予想2 減速は表向きで、裏では続く

判断を保留した。

言っていることとやっていることが食い違っているのは、予想1で見たとおり事実である。 ただ「裏で続いている」の動機、つまり何のために続けるのかは、 どの報道にも根拠がなかった。ここは書けない。

数字だけ置いておく。Anthropicの年間換算売上は7月末時点で約650億ドル。 2025年末が約90億ドルだったので、7か月で7倍になっている。 OpenAIは7月に400億ドルを超えた。

**この伸びの最中に減速を提案している。**それがどういう判断なのかは、外からは分からない。

予想3 大規模データセンターは要らなくなる

逆だった。縮小ではなく、分散だった。

たしかに、AnthropicとOpenAIが20〜30MWという小さい区画の案件を探し始めた、 という報道はある。Anthropicは英国と北欧、OpenAIは北欧で交渉しているとされる。 ここだけ読むと予想どおりに見える。

理由を読むと逆だった。

ギガワット級の案件用地・電力接続・地域の反対20〜30MWの小型案件電源と利用者の近くに置ける推論を分けて配置契約は並行して増加中すぐには使えないすぐ使える容量になるStargate 3GW+8GW ほか律速はチップでなく電力小さく買うのは、要らなくなったからではない。大きいものが間に合わないから。
不足しているのはチップではなく、すぐ使える電力だった。

大規模な案件は、用地が取れない、電力の接続が間に合わない、地域の反対がある、 といった理由で詰まっている。欧州では土地と電力の確保がさらに難しい。 一方で推論の処理は小さなクラスタへ振り分けられるので、 電源と利用者の近くに分けて置いたほうが速く立ち上がる。

そしてギガワット級の契約自体は並行して増えている。

要らなくなったのではなく、置き場所を変えている。 同じ事実を見ていても、理由まで読まないと結論が逆向きになる。

予想4 軍事向けが中心になる

逆だった。正確には、会社によって逆方向に分岐した。

軍事向けが伸びているのは事実である。 米国防総省のCDAOは、エージェント型AIの試作について2億ドルの契約を4件出した。 AnthropicとGoogle、OpenAI、xAIが対象だった。

その後、Anthropicだけが外れていく。

2026年2月、米政府がAnthropic製品の利用を停止し、同社を安全保障上のリスクと位置づけた。 5月1日に発表された機密ネットワーク向けの契約には8社が並んだ。 OpenAI、Google、Microsoft、AWS、NVIDIA、SpaceX、Reflection AI、Oracle。 Anthropicはここにいない。

理由は、国防総省が求めた「あらゆる合法目的での利用」をAnthropicが認めなかったためとされる。 自律型の兵器や、国内での大規模な監視に転用されうる、というのが同社の立場だった。

つまり ClaudeとCodexは、この軸では真逆に進んでいる。 片方は契約し、片方は外された。

予想の何が間違っていたかというと、前半ではない。 「AIの軍事利用が進む」は正しい。間違っていたのは、 その正しい文の後ろに、確かめていない固有名詞を乗せたところだった。

開発者の手元に何が残るか

ここまでは産業の話で、読んでも翌日の作業は変わらない。 自分の手元に効くのは一点だけだと思っている。

最新モデルの体験が、一旦高止まりする。

これまでは、新しい世代が出るたびに、同じ指示のまま結果が良くなっていた。 指示が甘くても次のモデルが吸収してくれる。その前提で組んでいた部分が、自分にもある。

止まるなら、伸ばせるのは指示の側しかない。 小型の蒸留モデルも元のモデルの性能に縛られるので、同じ時期に一緒に止まる。逃げ場がない。

これは予想であって、まだ事実ではない。減速の表明が出た直後に新モデルの検討が報じられる、 という状況なので、実際に止まるかどうかは分からない。 ただ、止まったときに困らない側に寄せておくのは、今からできる。

手元の運用でそれに当たるものをWIKIへ分けて書いた。 このリポジトリで実際に効いたのは3つで、どれもモデルの能力ではなく 指示が届いているかどうかの話だった。

まとめ

4つ予想して、2つが逆だった。

外れ方には形がある。今回はどちらも、 一般論としては正しい文に、確かめていない具体を接いだところで逆を向いた。 「データセンターの作り方が変わる」は正しく、「だから要らなくなる」は誤り。 「軍事利用が進む」は正しく、「だからClaudeもそちらへ行く」は誤り。

筋が通っている話ほど、そのまま書ける。書けてしまうので、確かめにいかないと分からない。