Valscopeの使い方 — 有報データで企業と産業を見る
はじめに
企業の業績を調べようとすると、EDINETで有価証券報告書のPDFを1社ずつ開くことになり、数社で力尽きます。Valscopeは、その有報データを機械的に整理して、企業ごと・産業ごとの推移をブラウザ上で比較できるようにした無料のツールです。
この記事では、Valscopeの主要画面が何を示しているか、どの順番で使うと分析が進みやすいかを整理します。
データの出どころ
Valscopeが扱っている数字は、金融庁のEDINETに提出された有価証券報告書から抽出したものです。
- 対象: 日本の上場企業(約5,000社)と米国の主要企業
- 項目: 売上高・各段階利益・キャッシュフロー・自己資本などの年次推移、四半期・セグメント情報
- 更新: 提出済みの有報を定期的に取り込み
株価そのものではなく、企業が公表した財務数値を軸にしている点が特徴です。有報の構成そのものについては有価証券報告書の読み方入門を先に読むと、画面の項目名が掴みやすくなります。
画面ごとの役割
企業一覧 — 個社を名前から探す
企業一覧は業種別に企業を並べた入口です。企業名・証券コードで検索できます。
個社ページでは、売上高・利益・キャッシュフローの年次推移に加えて、四半期の推移やセグメント別の内訳、提出済み書類の一覧が確認できます。「まずこの会社の数字を見たい」という目的がはっきりしているときはここから入ります。
企業マップ — 全体の中の位置を見る
企業マップは、直近年度の財務データをもとに上場企業を1枚の散布図に描いた画面です。軸に使う指標を切り替えられます。
一覧が「1社を深く見る」画面なのに対して、マップは「その1社が全体のどのあたりにいるか」を見る画面です。成長率が高いのか、収益性が高いのか、どちらでもないのかが、数字を覚えていなくても位置で分かります。
注目企業ボード — 上位から探す
注目企業ボードは、成長性・収益性・財務健全性・総合スコアでランキングした一覧です。業種別の代表企業もあわせて確認できます。
調べたい企業が決まっていないとき、「この業種で数字が伸びている会社はどこか」から入るための画面です。スコアは公表財務値からの機械的な計算であり、投資助言ではありません。
産業Sカーブ — 業界の成長段階を見る
産業Sカーブ分析は、産業別に集計した売上高にSカーブを当てはめて、その産業が導入期・成長期・成熟期のどこにいるかを判定する画面です。
個社の good/bad は、その産業がどの段階にあるかで意味が変わります。成熟産業で売上横ばいの会社と、成長産業で売上横ばいの会社は、同じ「横ばい」でも読み方が違います。この考え方はなぜ「産業」を見るのかで詳しく書いています。
集計ダッシュボード — 市場全体の傾向
集計ダッシュボードでは、成長率の分布やセクター構成といった市場全体の集計を確認できます。個社を見る前に相場観を作る用途です。
使う順番の目安
目的別に、迷いにくい入り方は次のとおりです。
| 目的 | 入口 | 次に見るもの |
|---|---|---|
| 特定の企業を調べたい | 企業一覧で検索 | 個社ページ → 企業マップで位置を確認 |
| 業界の候補を絞りたい | 産業Sカーブ | 注目企業ボードで業種内の上位を見る |
| 全体の傾向を掴みたい | 集計ダッシュボード | 企業マップ |
いずれの入口でも、最後は個社の年次推移に戻ってくることになります。1年分の数字ではなく、複数年の向きを見るのが基本です。
数字を読むときの注意点
- 有報ベースなので反映は遅い: 決算発表の速報値ではなく、有報提出後の確定値を扱っています。直近の四半期の動きを追う用途には向きません
- 単年度の数字は歪む: 特別損益や会計方針の変更で、1年だけ大きく振れることがあります。PER・PBR・ROEの基本で触れたとおり、指標は比較の出発点にすぎません
- 連結と非連結が混在する: 企業によって開示単位が異なります。前年と比較する際は同じ基準の数字か確認してください
- キャッシュフローと利益はずれる: 利益が出ていても現金が減っている状態はあり得ます。キャッシュフロー計算書で企業の体力を見るで解説しています
- 抽出漏れ・誤りの可能性: 機械的な抽出のため、元の有報と食い違う場合があります。気づいた点はお問い合わせから知らせてもらえると助かります
まとめ
- Valscopeは、EDINETの有報データを企業・産業単位で比較できるようにした無料ツール
- 個社を見るなら企業一覧、位置を見るなら企業マップ、候補を探すなら注目企業ボードと産業Sカーブ
- スコアやランキングは公表財務値からの機械的な計算であり、投資判断そのものではない
- 最終的には元の有価証券報告書に当たるのが確実
免責: この記事は教育目的の一般情報であり、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。