消費税を納める事業者になるのはいつか——1,000万円と特定期間の判定を整理する

公開: 2026-08-20
消費税インボイス個人事業主免税事業者確定申告

「売上が1,000万円を超えたら消費税を納める」。これは正しいのですが、いつから納めるのかを取り違えると、資金繰りに直接響きます。

しかも1,000万円は入口がひとつではありません。前々年の売上で判定される道と、前年上半期で判定される道があり、後者に引っかかると納税の開始が1年早まります。

順番に整理します。


原則: 前々年の売上高で判定する

個人事業主の場合、判定に使うのは基準期間、つまり前々年の課税売上高です。

基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務は免除されます。これが免税事業者です。

判定する年基準期間判定額
令和8年分令和6年令和6年の課税売上高
令和9年分令和7年令和7年の課税売上高

売上が伸びた年にすぐ納税が始まるわけではなく、2年の猶予があります。この間に価格設定や資金の準備をしておく、というのが本来の使い方です。

令和6年の課税売上高が1,000万円を超えると、令和8年から課税事業者になる。2年のずれがある
原則は2年遅れ。令和6年に超えたら令和8年から納税

例外: 特定期間で判定されると1年早まる

基準期間が1,000万円以下でも、安心はできません。特定期間による判定があります。

個人事業主の特定期間は、前年の1月1日から6月30日までです。この半年間の課税売上高が1,000万円を超えると、翌年から課税事業者になります。

判定見る期間課税事業者になる年
基準期間令和6年(1年間)令和8年
特定期間令和7年1月〜6月令和8年

つまり令和7年の上半期に1,000万円を超えていれば、令和6年の売上に関係なく令和8年から課税事業者です。急成長した年の翌々年ではなく、翌年に来ます。

給与等支払額での判定に切り替えられる

ここに救済があります。特定期間の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額で判定することができます

どちらで判定するかは事業者が選べます。

特定期間の課税売上高特定期間の給与等支払額結果
1,000万円超1,000万円以下給与で判定すれば免税のまま
1,000万円超1,000万円超課税事業者になる
1,000万円以下免税のまま
特定期間の判定は課税売上高と給与等支払額のどちらかを選べる。従業員のいないひとり事業者は給与支払額がゼロのため免税のまま
ひとり事業者は給与支払額が小さいため、この道で免税を維持できることが多い

従業員を雇っていないひとり事業者は、給与等支払額がほぼゼロです。 そのため特定期間の判定に引っかかることは実際にはあまりありません。人を雇って事業を広げた段階で、初めてこの判定が効いてきます。

なお、事業主本人の生活費(事業主貸)は給与ではないため、この金額には入りません。

インボイス登録をしている場合は判定そのものが関係ない

ここが現在いちばん混乱しやすいところです。

インボイス発行事業者として登録している場合、売上が1,000万円以下でも課税事業者です。 登録には課税事業者であることが前提になるため、免税の判定を通り越します。

つまり現在の個人事業主は、大きく2つに分かれます。

状態消費税の納税判定の要否
インボイス登録済み売上に関係なく納税判定は不要
未登録基準期間・特定期間で判定毎年判定する

未登録のまま売上が伸びている方は、毎年この判定を意識する必要があります。

インボイス登録済みの方については、2割特例が2026年9月末で終わることのほうが影響が大きいので、そちらもあわせてご確認ください。

提出する届出書

課税事業者になることが分かったら、届出が必要です。

状況提出する書類提出時期
基準期間の売上で課税事業者になる消費税課税事業者届出書(基準期間用)該当することとなったら速やかに
特定期間の売上で課税事業者になる消費税課税事業者届出書(特定期間用)同上
自分から課税事業者を選ぶ消費税課税事業者選択届出書適用を受けたい課税期間の前日まで
選択をやめる消費税課税事業者選択不適用届出書やめたい課税期間の前日まで

注意点が2つあります。

ひとつは、課税事業者選択届出書は提出した課税期間の「翌」課税期間から効くことです。令和9年から課税事業者になりたいなら、令和8年12月31日までに出す必要があります。年が明けてから出しても、効くのは令和10年からです。

もうひとつは、いったん課税事業者を選択すると2年間は戻れないことです。設備投資の年に消費税の還付を受けるために課税事業者を選ぶ、という判断はありますが、翌年も課税事業者として納税が続きます。2年通算で得かどうかを見る必要があります。

判定に使うのは「課税売上高」

最後に細かいようで重要な点です。判定に使うのは売上の総額ではなく課税売上高です。

消費税がかからない取引は除きます。個人事業主に関係しやすいのは次のようなものです。

補助金を受け取った年は、帳簿上の収入が膨らんで1,000万円を超えて見えることがありますが、判定には入りません。逆に言えば、判定を正しく行うには、日々の記帳で課税・非課税・不課税が区分されている必要があります。

年末にまとめて集計すると、この区分が曖昧なまま判定してしまいます。私が作っているちょうぼっちでは、記帳の時点でこの区分を持たせる設計にしています。

まとめ

参考(国税庁)