少額減価償却資産の特例が40万円未満になった——10万円・20万円・40万円の使い分け

公開: 2026-08-20
減価償却少額減価償却資産個人事業主青色申告税制改正

パソコンを25万円で買った。これは経費にできるのか、それとも減価償却なのか。

個人事業主が毎年つまずくのがこの判断です。しかも令和8年度税制改正で基準額が動きました。30万円未満だった少額減価償却資産の特例が、40万円未満になっています。

適用は令和8年4月1日以後に取得した資産から。つまり今年の確定申告から、取得日によって答えが変わります。


前提: 10万円以上は原則として減価償却

事業で使うものを買ったとき、取得価額が10万円以上なら、原則としてその年に全額を経費にはできません。耐用年数にわたって分割して経費にしていきます。これが減価償却です。

ただし例外が3つあり、実務ではこの例外のほうをよく使います。

取得価額使える制度経費にできるタイミング
10万円未満少額の減価償却資産取得した年に全額
10万円以上20万円未満一括償却資産3年間で均等に3分の1ずつ
10万円以上40万円未満少額減価償却資産の特例(青色申告者)取得した年に全額(年300万円まで)
取得価額による減価償却の扱いの違い。10万円未満は全額経費、20万円未満は一括償却資産で3年、40万円未満は青色申告者の特例で全額、それ以上は通常の減価償却
取得価額による分かれ道。40万円未満の帯は青色申告者だけが使える

帯が重なっているのは書き間違いではありません。たとえば15万円のものは、一括償却資産としても少額特例としても処理できます。どちらを選ぶかは自分で決めます。

何が変わったのか

令和8年度税制改正で、少額減価償却資産の特例が次のように変わりました。

項目改正前改正後
取得価額の基準30万円未満40万円未満
年間の限度額300万円300万円(据え置き)
適用期限令和8年3月31日令和11年3月31日(3年延長)
対象から除外される規模常時使用する従業員500人超400人超

個人事業主にとって効くのは上の2行です。従業員数の要件は、ひとり親方や小規模事業者には関係ありません。

注意したいのが適用の開始時期です。令和8年4月1日以後に取得したものから40万円未満になります。同じ年の中でも、3月に買った35万円のカメラは対象外、5月に買った35万円のカメラは対象、という分かれ方をします。

令和8年3月31日以前に取得した資産は30万円未満、令和8年4月1日以後に取得した資産は40万円未満が特例の対象
同じ年でも取得日で基準が変わる。判定は取得日で行う

20万円のものはどちらで処理すべきか

10万円以上20万円未満は、一括償却資産と少額特例のどちらも選べます。悩みどころなので、判断基準を整理します。

少額特例(全額経費)が向く場合

一括償却資産(3年均等)が向く場合

2つ目が見落とされがちです。一括償却資産として処理したものは、償却資産税(固定資産税の一種)の課税対象になりません。一方、少額特例で全額経費にしたものは課税対象に含まれます。

事業用資産の合計が課税標準額150万円未満なら償却資産税はかかりませんが、機械や什器が増えてくるとこの線を超えます。所得税を数万円減らした結果、償却資産税が毎年発生する、という逆転が起こりえます。

少額特例を使うときの条件

この特例は誰でも使えるわけではありません。

最後の項目が抜けやすいところです。青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に、この特例を使った旨と取得価額の合計額を記載します。書き忘れると特例が使えません。

なお、年の途中で開業した場合、300万円の枠は月数按分になります。10月開業なら3か月分で75万円です。

消費税の経理方式で判定額が変わる

もうひとつ、実務で間違いが多いのがここです。

10万円・20万円・40万円の判定は、税抜経理をしているなら税抜金額、税込経理をしているなら税込金額で行います。

税込43万円(税抜約39万1千円)のパソコンを考えてみます。

経理方式判定に使う金額40万円未満か
税抜経理391,000円該当する
税込経理430,000円該当しない

免税事業者は税込経理しか選べないため、同じものを買っても課税事業者より不利になることがあります。9万円台後半、19万円台後半、39万円台後半の買い物をするときは、自分がどちらの経理方式かを先に確認してください。

何を根拠に判断するか

減価償却は「買ったときにどう処理するか」を決めた時点で、その後3年分の帳簿が決まります。後から変えられません。

判断に必要なのは、その年の利益見込みと、すでに使った300万円枠の残りです。どちらも帳簿がついていれば即座に分かるものですが、年末にまとめて記帳していると、買う時点では分かりません。

私が作っているちょうぼっちは、この手の「買う時点で判断材料が手元にある」状態を作ることを目的にしています。固定資産の登録と償却計算まで含めて、ひとり事業者が確定申告まで通せる範囲を扱っています。

まとめ

参考