簡易課税のみなし仕入率——自分の事業が第何種かを判断する

公開: 2026-08-21
消費税簡易課税みなし仕入率個人事業主インボイス制度

簡易課税を選ぶと、納税額はみなし仕入率でほぼ決まります。実際にいくら経費を使ったかは関係なく、「あなたの業種なら売上の何%が仕入れでしょう」という決め打ちの率で計算されるからです。

率は50%と70%で20ポイント違います。売上1,000万円なら納税額が20万円変わる計算です。自分がどの区分に当たるのかは、想像以上に効きます。

2割特例が終わったあとの選び方の続きとして、区分の判断を掘り下げます。


6つの区分

事業区分主な事業みなし仕入率
第1種卸売業90%
第2種小売業、農林漁業(飲食料品)80%
第3種製造業、建設業、鉱業、電気・ガス・水道業70%
第4種飲食店業、加工賃を対価とする役務提供など60%
第5種運輸通信業、金融・保険業、サービス業50%
第6種不動産業40%

率が高いほど納税額は小さくなります。第1種の90%なら売上の消費税の1割だけ納めればよく、第6種の40%なら6割を納めることになります。

卸売業と小売業の分かれ目は「売る相手」

第1種と第2種は、扱う商品ではなく誰に売るかで分かれます。

他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業

これが第1種(卸売業)の定義です。売る相手が事業者なら第1種、消費者なら第2種になります。同じ商品を同じように仕入れて売っていても、相手によって率が10ポイント変わります。

「性質、形状を変更しないで」という条件も見落としがちです。仕入れたものに手を加えて売ると、第1種・第2種ではなく第3種(製造業)になります。ただし食料品小売店が仕入れた商品に行う軽微な加工で、その業界で通常行われるものは第2種のままとされています。切り分けやパック詰め程度なら小売のまま、ということです。

フリーランスがつまずきやすいのは第4種と第5種

ここが個人事業主にとっていちばん判断が難しいところだと思います。

**サービス業は第5種(50%)**が原則です。ライター、デザイナー、エンジニア、コンサルタントといった、いわゆるフリーランスの仕事はここに入ることが多いはずです。

一方で**「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」は第4種(60%)**です。材料を相手から預かって加工し、加工賃だけを受け取る形の仕事が該当します。

紛らわしいのですが、第4種のほうが率が高い(=納税額が小さい)点に注意してください。「サービス業だから第5種」と機械的に決めると、本当は第4種だったのに損をする、ということが起こり得ます。

自分で材料を調達して製品を作って納めるなら第3種(製造業、70%)になる可能性もあります。材料を誰が用意するかが分かれ目のひとつです。

飲食店業の例

第4種の代表例が飲食店業です。ここにも細かい判定があります。

ホテル内の独立した施設で飲食を提供する場合は飲食店業(第4種)ですが、「1泊2食付」のように宿泊料と一体になっている場合は、その全額が第5種の対価になります。同じ食事の提供でも、料金の建て方で区分が変わるということです。

複数の事業をしている場合

区分の異なる売上が混ざっている場合、原則は課税資産の譲渡等ごとに判定します。売上を区分ごとに分けて、それぞれのみなし仕入率で計算し、合算します。

ただし特例が2つあります。

1種類の事業が75%以上を占める場合

1種類の事業の課税売上高が全体の課税売上高の75パーセント以上を占める場合には、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに対して適用することができます

主力事業が75%以上なら、全体にその率を適用してよいという特例です。主力の率が高い(第1種や第3種など)なら、これを使ったほうが有利になります。

3種類以上で、2種類の合計が75%以上の場合

みなし仕入率の高いほうの事業にはその率を適用し、それ以外の売上には、その2種類のうち低いほうの率を適用できます。

いずれも「できます」と書かれているとおり選択です。原則計算と比べて有利なほうを選べます。

区分しなかった場合

これが厳しい。

この区分をしていない部分については、その区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率を適用

区分していない売上には、その中で最も低い率が適用されます。 第1種(90%)と第5種(50%)の売上が混ざっているのに区分していなければ、全部50%で計算されることになります。

簡易課税は「経費を集計しなくていい制度」ですが、売上の区分は必要です。ここを帳簿でやっておかないと、制度の恩恵を取りこぼします。

実務としてどうするか

私は次の順で考えるようにしています。

  1. 売上の種類を書き出す。 取引先ごと・案件の種類ごとに、何を提供して対価をもらっているのかを並べる
  2. それぞれ「何を売っているか」「相手は誰か」「材料は誰が用意したか」で区分を当てる
  3. 区分が混ざるなら、帳簿の段階で分けて記録する。 後からまとめて分類しようとすると、請求書を1枚ずつ見直すことになる
  4. 判断に迷うものは所轄の税務署に確認する。 区分は事実認定の要素が強く、一般論では決まらない部分があります

3番が肝心で、ここは日々の記帳の話になります。売上を入力するときに区分も一緒に持たせておけば、申告時に集計するだけで済みます。私は自分の記帳用に無料のちょうぼっちを作って使っていますが、道具は何であれ、入力時に区分を残すという習慣が要ります。

まとめ

数字は本記事執筆時点(2026年8月)の国税庁タックスアンサーNo.6505・No.6509に基づきます。事業区分の判定は個別性が高いため、迷う場合は所轄の税務署または税理士にご確認ください。


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