インボイス登録をやめるという選択——取消届出の期限と、2年間は戻れない縛り
2割特例が終わると納税額が増えます。それならインボイス登録をやめるという選択肢はどうなのか。取引先が消費者や免税事業者ばかりなら、登録している意味はそれほど大きくないかもしれません。
登録の取りやめは制度として用意されています。ただし調べてみると、期限の切り方が独特で、しかも戻れない期間があることが分かりました。整理します。
取りやめの手続き
「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(登録取消届出書)を、納税地を所轄する税務署長に提出します。これで登録の効力が失われます。
いつ効力が失われるかが問題です。
なお、この場合、原則として、登録取消届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力が失われることとなります。
出した年の翌年から、ということです。ただしここに条件が付きます。
「15日前」を過ぎると1年先送りになる
ただし、登録取消届出書を、翌課税期間の初日から起算して15日前の日を過ぎて提出した場合は、翌々課税期間の初日に登録の効力が失われることとなります。
つまり期限は「翌課税期間の初日から起算して15日前の日」まで。1日でも過ぎると、効力が失われるのが1年先になります。
個人事業主の課税期間は暦年なので、当てはめるとこうなります。
| 登録をやめたい年 | 登録取消届出書の提出期限 |
|---|---|
| 2027年1月1日から | 2026年12月17日まで |
| 2028年1月1日から | 2027年12月17日まで |
Q&Aでは3月決算法人の例が示されていて、令和7年4月1日からやめる場合の期限は令和7年3月17日とされています。同じ数え方を1月1日に当てはめると12月17日になります。
休日でも延びない
これが厳しいところです。
「翌課税期間の初日から起算して15日前の日」が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日、土曜日又は12月29日、同月30日若しくは同月31日であったとしても、これらの日の翌日とはなりません。
税務の期限は「休日なら翌開庁日まで」というものが多いのですが、これは延びません。12月17日が土日でも12月17日が期限です。年末は郵便も混み合うので、余裕を持って出す必要があります。
登録をやめても免税事業者に戻れるとは限らない
ここがいちばん重要な点だと思います。
登録をやめることと、免税事業者に戻ることは別の話です。
なお、免税事業者が登録に係る経過措置により令和5年10月1日を含む課税期間以外の課税期間に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合は、適格請求書発行事業者の登録を取りやめたとしても、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間について免税事業者となることはできません。
免税事業者だった人が経過措置を使って登録した場合(令和5年10月1日を含む課税期間に登録した人は除く)、登録日から2年を経過する日の属する課税期間までは課税事業者のままです。
登録を取りやめると、適格請求書は発行できなくなります。それなのに消費税の納税義務は残る。いちばん損な状態になり得ます。
自分がこの2年縛りの対象かどうかは、いつ登録したかで決まります。制度開始時(2023年10月1日を含む課税期間)に登録した人は対象外ですが、その後に登録した人は確認が必要です。
やめる前に考えること
登録をやめると、取引先はあなたへの支払いについて仕入税額控除ができなくなります(経過措置の割合だけは控除できます。2026年10月からは70%)。
判断の軸は取引先の構成だと思います。
| 主な取引先 | 登録をやめる影響 |
|---|---|
| 一般消費者 | ほぼ無い。相手は仕入税額控除をしない |
| 免税事業者・簡易課税の事業者 | 小さい。相手はインボイスを必要としない |
| 本則課税の課税事業者 | 大きい。相手の納税額が増えるため、値下げ交渉や取引見直しの可能性 |
私の場合は本則課税の法人が取引先に含まれるので、やめる選択は現実的ではありませんでした。ただ、消費者向けの仕事が中心の方なら、真剣に検討する価値があると思います。
なお、やめる前に簡易課税で計算するとどうなるかは試算しておいたほうがよさそうです。登録を維持したまま簡易課税にするほうが、結果的に負担が軽いこともあります。みなし仕入率の区分によって差が大きいので、自分の区分で計算してみてください。
まとめ
- 登録の取りやめは「登録取消届出書」の提出で行う
- 効力が失われるのは提出した課税期間の翌課税期間の初日
- ただし「翌課税期間の初日から起算して15日前の日」を過ぎると翌々課税期間になる。個人事業主が2027年からやめるなら2026年12月17日まで
- この期限は休日でも延びない
- 経過措置で登録した免税事業者は、登録日から2年を経過する日の属する課税期間まで免税事業者に戻れない。登録を外しても納税義務だけ残ることがある
- 取引先が本則課税の事業者中心なら、やめる影響は大きい
数字は本記事執筆時点(2026年8月)の国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問13(令和6年4月改訂)に基づきます。2年縛りの対象かどうかは登録した時期によって変わるため、個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。
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